11月8日 - ウィーンのトラム! -
ウィーン行の飛行機、出発時間は12時55分。11時に空港に到着していれば問題ないはずだが、何しろ、外国から外国への飛行機に乗るのは初めて。しかも僕、かなり英語が苦手。一体どんなトラブルがあるか分からないので、余裕を持って、かなり早めにチェックアウトする。この時、8時半。早すぎるかもしれないが、早く空港に到着しないと、何となく落ち着かないのだ。朝食すら食べずに宿を出る僕。

「何だ、もう行くのか。これからヴィエナに行くのか?ヴィエナ?」

宿を出ると、出入口前で掃除をしていた、宿主のおじさんが声をかけてくる。

「いや、ヴィエナじゃないっすよ。ウィーンです」
「何?だからヴィエナだろ。ヴィエナ」
「いやだから、ヴィエナじゃないって……」

と、ここまで言いかけた瞬間、Wienは英語でViennaと言う事を思い出す僕。

「あ、はいはい。そうでした。ヴィエナです」
「また来月、ロンドンに戻って来るんだよな。またな!」

おじさんとの挨拶も済ませ、ヒースロー・エキスプレスに乗って空港に向かう僕。

それにしてもスーツケースが軽い!東京から来た時に比べて、スーツケースが本当に軽いのだ。昨日、友人がスーツにコート、シャツなどを預かってくれたおかげなのだ。これからは荷物の重さに悩まされず、快適な旅ができるなあ~♪

ヒースロー空港に到着したのは9時20分頃。……やっぱり早すぎたなー。朝食ぐらい、食べて来れば良かった。

英語が苦手な僕は、緊張しつつルフトハンザ航空の搭乗手続きに向かう。係員さんの言う事が半分も分からない僕は適当に答えていると、係員さんは勝手にステッカーを僕のスーツケースに貼り、荷物の流れるベルトコンベアに流してしまった。

うーん、どうやらこれで、搭乗手続きは終わったみたい。続いて荷物チェックだが、こちらも特に怪しい物を持ってない僕は、何事もなく終わってしまった。後は飛行機に乗るだけだ。しかし出発まで、あと3時間ぐらいあるぞ……。
何かのトラブルを想定して時間に余裕を持っていると、何もなかった時に時間を持て余してしまうなあー。

ラウンジでのんびりしつつ、長い待ち時間を過ごす。出発も特に遅れる事なく、いざウィーンに向かう!

ロンドンからウィーンなんて近いものなので、機内食はなし。飲み物のサーヴィスだけあったので、僕は赤ワインを頂く。

しかし……このワイン一杯の量が意外に多い。大き目のグラスになみなみと注がれ、驚いてしまう僕。こ、こんなに飲むのか……。朝から何も食べてない僕は空きっ腹。これ全部飲んだら、かなり酔いが周るぞ……。

酔いそうなら残せばいいのに、貧乏性の僕は残すのが嫌い。全部飲み干してしまう。うーん、あ~……、やっぱり酔ってきたな………。

2時間ほどでウィーンに到着。座席から立ち上がると、足元がおぼつかないことが分かる。やはり酔っているようで、「地球の歩き方・中欧編」も座席に忘れそうになってしまう。飛行機から地上に降りる階段でも、ゆっくり降りないと踏み外しそうになってしまう。あー、やばいな。何か失敗しなきゃいいけど……。

空港に降りると、まずは荷物を取りに行かなくてはならないが、果たしてどこに行けば良いのかさっぱり分からない。乗客の皆様の流れに乗って進むと、なんとそこに、
日本人スタッフさんを発見!

オアシスを見つけた気分で、その職員さんに荷物の受け取り場所を伺い、荷物を受け取る。うーん、最初から日本人頼り。これから旅を続けられるんだろうか……。

荷物を受け取った僕だが、さて、これからどうしようかな……。僕はウィーンでの宿の予約をしておらず、現地で見つけるしかないのだ。とりあえず、ずっと空港にいても仕方がないので、ウィーン中心街に出る事にする。空港からウィーン西駅へリムジンバスが出ているそうなので、それに乗る僕。

バスから見えるウィーンの景色は、もう日が落ちかけてきている。欧州の夜は早いなあ……。何しろウィーンは知らない街。治安がどうなのかも分からないので、できれば日が昇っているうちに宿を見つけておきたい。

やがてウィーン西駅に到着。まずは何よりも早く、宿を探さなくては!と、駅内にあるインフォメイションへ向かう。どうもインフォメイションだと、ホテル情報とかを教えてくれるそうなのだ。夜になったら、インフォメイションも閉まってしまうぞ。急がなくては!

インフォメイションには先客が一人いるだけ。スタッフさんも一人だったが、それほど忙しくなさそうだ。

「すいません、ウィーンの安い宿を探しています。ホテルリストとかはないですか?」
「そう言うのはないよ」

なぬ?ない?
あっさり出鼻をくじかれ、戸惑う僕。じゃあ、僕はどうやって宿を探せば良いのだ……ウィーンで一番安い宿を教えて欲しかったのに。

がっかりしてインフォメイションを出ると、外は大分暗くなっている。空のかなたに、ほんのわずか夕焼けが見える程度。間もなく夜だ。早く宿を決めなくては!

時間を無駄にするのも良くない。ここは決断早く、「地球の歩き方」に書いてあったユースホステル、「ウォンボッツ」を訪ねる事にする。西駅から徒歩5分くらいの場所にあるようだ。僕は共同部屋に抵抗があるためシングル・ルーム希望だが、このユースホステルにはシングル・ルームの用意もあるらしい。「地球の歩き方」にある地図で場所を確認し、さあ急げ!

しかしその時!

「危ないっ!」(とドイツ語で言ってたんだと思う)

若い男性の声が聞こえる。ハッと顔を上げると、なんと左から
トラムが急接近しているではないかっ!

やばい、轢かれる!


スーツケースをグッと持ち上げ、線路から跳び上がって逃げる僕。

間もなく目の前を通過するトラム。運転手さんは窓から顔を出し、「危ねえな、この野郎」と言わんばかりの表情で僕を睨み付ける……。
そして、さっき声が聞こえた方向に目を向けると、そこには若い男性。「気を付けた方がいいぞ……」と言いだけなびっくりした顔で、僕を見ている。

「ダンケ」

とりあえず、若者へお礼を言う僕。危機一髪ほどではなくとも、危機二髪ぐらいではあった……。この若者の声がなければ、やばかったかもしれない。そして、スーツケースに、スーツ、コート、鞄などが入って重量があるままだったら、こうも簡単に飛び上がれなかったかもしれない。ロンドンにて荷物を預かってくれた友人に、間接的に助けてもらった……。友人よ、ありがとう。心の中でお礼を言う僕。

それにしてもまずい事に、トラムが接近しているのに気付かなかった。初めての国に来て、精神的に余裕がない。そして
大分酔いが回っていて、注意力散漫になっているのだ。

旅はまだ2ヵ国目なのに、この有様。先が思いやられるなあ……。

かと言って、あまり落ち込んでもいられない。早く宿を取らなくては。

「すいません、この宿に行きたいんですけど、方向はこちらで合っていますか?」

西駅近くにておじいさんに声をかけ、方向が問題ないか、念のため確認する僕。暗い中で、道に迷うのだけは避けたいのだ。

「え~、あ~、私は英語がよく分からない。おおい!」

なんとおじいさん、近くにいた孫娘さんを呼んでくれる。

「ほら、彼女と話してくれ」
孫娘さんは、英語が可能のようだ。
「あ~、すいません。えっとですね、この宿に行きたいんですけど、こちらで大丈夫ですか?」
「えーっと……、大丈夫よ。ここをまっすぐ行って、そこを右に曲がって、こうこうこう行けば大丈夫」
「ダンケ!」

親切なご家族に感謝!方向が間違ってない事に安心して、ウォンボッツへ歩を進める僕。

特に道に迷う事もなく、ウォンボッツに到着。中に入ると、さすがに若い人だらけ。ユースホステルには生まれて初めて入るのだが、宿と言うよりも合宿所に近い感じ。宿内は結構騒がしく、若いエネルギーに満ち溢れている。通常、この時期は宿の閑散期であり、大抵、部屋も結構空いているそうだが、ここは大丈夫かな……?

「すいません、シングル、トイレ・シャワー付の部屋を探しているんですけど、部屋は取れますか?」
受付のスタッフさんに声をかける。
「あ、大丈夫ですよ」
やった!
「じゃあ、泊まりたいんですけど、一泊いくらですか?」
「42ユーロ」

むっ、42ユーロかあ……予算ギリギリではないか。ユースホステルだから、きっと安いのだろうと思っていたけど、ちょいとアテが外れたぞ………。
普通の方なら、一泊42ユーロは安いと感じるだろうが、貧乏旅行者の僕にとってはそうではないのだ。でも、これ以上宿に手間取ってもいられない。予算ギリギリだけど、ここはウォンボッツにしよう。

「分かりました。ここに泊まります」
「じゃあ、何泊します?」
「2泊で」

本当なら、ウィーンでは4泊する予定なのだが、まずはここで2泊だけして、その間に、もっと安い宿を探そうと言う、セコイ考えの僕。

「OK。バスタオルは有料で貸し出してるからね」

えっ、タオルは有料かあ……。一応、こう言う時のためにバスタオルは日本から持参して来たので問題ないが、この宿、あんまり安くないなと言う印象を受ける。

部屋に入ると、思っていたよりずっとキレイで、内装もポップでオシャレ。この宿自体が割と新しいようで、センスが現代的なのだ。しかもシングルのはずがツインの部屋をあてがわれ、この広さを独り占めできるのは嬉しい!

やっと人心地ついた~!何とか宿はとれたので、安心する僕。

しかし、ウィーンを少しでも長く満喫したい。部屋にこもっている時間がもったいないので、スーツケースから荷物を出して幾分落ち着くと、さっさと街へ飛び出す!

やっと来たぜウィーン~!

ここには長年の憧れだったゲオルグ・マテルナ親方がいるのだ!今から注文する時が楽しみで仕方ないぜっ!

嬉しさのあまり、意味もなく夜道を突っ走って喜ぶ僕。そして、「イェイッ!」と飛び上がる。すると、

あいてっ!

後ろからぶつかってくる、長身強面の黒人のお兄さん。

「気をつけろ!」(とドイツ語で言ってたんだと思う)

怒られてしまう。あまりはしゃぎすぎるのは良くないと言う、いい教訓ですね。

考えてみれば、今日は朝から何も食べてない。お腹が空いたので、まずは何か食べる事にする。ちょうど近くにハンバーガー・ショップがあったので(有名チェーン店ではない)、そこに入店。

中に入ると、インド系と思われる女性がハンバーガーを作っていた。メニューを見ると、価格が随分安くて驚く。このお店、本当に大丈夫なのかな……。少々不安に駆られつつ、チキンバーガーとオレンジ・ジュースを注文。

すると、出てきたハンバーガーは思っていたより大きく、味も悪くない。これでたった
2.7ユーロ!安いなあ~とかなり満足。

ハンバーガー・ショップを出た後は、ネットカフェにてインターネット。さて、宿に帰ろうかとすると、なんと宿の近くに、
ペンション・ホテルを発見!自分が泊まっているウォンボッツから、歩いて30秒程度の距離だ。最初に来た道とは違う道に建っているので、その存在に気付かなかったのだ。この宿、果たしていくらぐらいだろうか?

物は試しにと、そのペンション・ホテルに入り、受付に座っているおばさんに聞く事にする。どうも、このおばさんが宿主のようだ。態度も堂々としている。

「すいません、この宿、シングルのトイレ・シャワー付で、一泊いくらですか?」
「38ユーロ。朝食付でね」

うわ!ウォンボッツより安いでやんの!失敗したな~!

「今すぐ泊まれる?部屋空いてますか?」
「空いてるよ」
「そうなんですね……。ありがとうございました。また来ます」

うっわ~、ウォンボッツのすぐ近くに、もっと安い宿があるなんて!いきなり後悔。現地での宿探し、初挑戦は失敗だな~。しかしもう、お金を払ってしまったのは仕方がない。ウィーン滞在の前半はウォンボッツ、そして後半は、このペンション・ホテルに泊まるとしよう……。


 11月9日 - ウィーンの20代女性二人 -
朝食を食べようと食堂に向かうと、まず食券を買うように言われる。食券は3.5ユーロ。昨晩見つけたペンション・ホテルでは、朝食込みで38ユーロなので、やはりこのユースホステル、さほど安くないなと感じてしまう。

食堂内を見渡すと、意外に小学生と思わしき集団が多い。修学旅行なのだろうか?そして、その小学生たちを見ると、活発そうな子は、活発そうな子で集まっているし、頭の良さそうな子は、頭の良さそうな子で集まっているし、おとなしそうな子は、おとなしそうな子で集まっているし……、やはり性格ごとでグループができるのは、日本の小学生たちと同じだなー、と思ってしまう。旅行が楽しいのだろう、はしゃぎながら食事をしている小学生たちを見ているのも面白い。

食事を終えるとすぐに宿を出て、メトロの駅へ向かう僕。旅行者用の一週間定期券を買い、まずはウィーン中心街に出てみようと、ホームにある路線図を見る僕。すると、その路線図近くに立っていたおじさんが声をかけてきました。

「どこに行きたいの?」

おお、わざわざ教えて下さるのですかっ!

「いえいえ、大丈夫ですから。ありがとうございます」

あ~、ウィーンの人たちも優しいんだあ。早速ウィーンに好印象を持つ僕。

メトロに乗ると、特に意味はなく、シュテファン・シュプラッツ駅にて下車。そして、特にあてもなく歩いていると、高級靴店「シューマン」を見つけて写真を撮りまくる僕。

さーて、どこに行こうかな。ウィーンに来た一番の目的は、ゲオルグ・マテルナでのビスポークだけど、いきなり初日に注文を済ませてしまうのも、もったいない。ウィーンには12日まで滞在する予定なので、時間的に余裕はある。それならば、今日はゆっくり、ただひたすらブラブラしよう!
ウィーンの街並み2004年

外に出ると、急に雨が降り出しました。ロンドンでもそうでしたが、日本との気候の違いを感じます。
ウィーンの街並み2004年

そして、通り過ぎる馬車。この馬車、地元の人は普通は利用せず、浅草の人力車と同じく、観光客用みたいです。
ただ散歩しているだけでも、道中、いくつかビスポーク・テイラーを見つけ、事前情報どおり、ウィーンはビスポーク文化が残る町なのだなと実感する。

さらに散歩を続けて、中心街であるウィーン1区を歩いていると……。ちょっとぎょっとする光景を目撃する。

いた、物乞いの方々。観光名所と言う、目立つ所に何人も並んでいてびっくりしてしまう。

「観光名所とか、人がたくさん集まる所に行ってみてよ。物乞いの人がたくさんいるから。日本じゃ、あんなにいないよ」

2日前に、ロンドン在住の友人が言った言葉が脳裏をかすめる。

ここはウィーン。ロンドンではないもの、確かに日本ではこんなに物乞いはいない。いたとしても、こんな観光名所近くでお目にかかれない。このウィーンの物乞いさんたちは、単純に人がたくさん集まる場所=お金が集めやすいと考えて、ここにいるのだろう。さらに、日本で物乞いと言うと、40代以上の年齢を思い浮かべてしまうが、ウィーンでは20代であろう若者が、地面に這いつくばってお金を恵んでもらおうとしているのだ。その事実にさらに驚き、そして日本の豊かさを実感する……。

さらに散歩を続けていると、どうやらレザーウェア専門らしい、「ASLAN MODEN」と言う、一風変わったビスポーク・テイラーを見つける。これは話しの種になるかもと思い、入店してみる。

入店すると、店主らしきおじさんが出てきた。しかし、ドイツ語しか通じず、話が噛み合わない。店主さんも、これではダメだと思ったのか、お店の奥から誰かを呼び寄せました。すると……。

年齢は20歳そこそこでしょうか、こちらがたじろくほどの美少女が登場!僕と同じくらい小柄で、大きい瞳、ピンクがかった白い肌、赤みがかってくせのあるロングヘア、とにかくかわいすぎる。どうやら彼女は、このお店の縫い子さんらしい。

こんなにかわいい子が縫い子やっているなんて、ウィーンって何て素晴らしい所なんだろう!

一人で勝手に驚喜する僕。

「君、こんな所で縫い子やってる場合じゃないで!」

思わずそう言ってしまいそうになるが、さすがに言わない。

「何か注文したいの?」

彼女は英語でそう話しかけてきました。おそらく彼女が、唯一このお店で英語が話せるスタッフなのだろう。もっとも、彼女の英語もたどたどしくて、それほど得意ではなさそうだ……。

「いや、そう言うわけじゃないんですけど……。ちょっと店内を見させてもらえます?」
「いいよ、どうぞ見て行って」
「店内の写真撮ってもいい?」
「いいよ」

僕はアトリエ内に通されると、その女の子や親方職人さんは仕事に戻りました。お店のスタッフさん、ほとんどが英語不可なので、話しかけるのも難儀しましたが、それでも店内の様子を撮影させて頂けました。どうもありがとうございました。

「ASLAN MODEN」を出て、また気ままに歩いていくと、フランツ・ヨーゼフ駅に辿り着く僕。ん?フランツ・ヨーゼフ駅?確かフランツ・ヨーゼフ駅って、ウィーン中心街の隅っこの方じゃなかったか?

思わずウィーンの地図を取り出し、フランツ・ヨーゼフ駅の場所を確認する僕。やはりフランツ・ヨーゼフ駅は、ウィーン中心街の端っこだ……。まだそんなに歩いてないのに、もう端まで来ちゃったの?

「ウィーンって狭いのな……」

拍子抜けしてしまう僕。

フランツ・ヨーゼフ駅近くにはマクドナルドがあり、そのマクドナルド店頭には、「NIPPONバーガー」の垂れ幕があった。うーむ、NIPPON(日本)バーガーかあ……。おそらくこのNIPPONバーガー、日本では食べられない品だろう。少しお腹もすいてきたし、せっかくなので、NIPPONバーガーを食べてみよう。

そのNIPPONバーガー、ソースはわさび醤油で、ピクルスのかわりに胡瓜が用いられている変わり種。でも、味はなかなか。

マクドナルドを出ると、ウィーンに来た目的の一つ、サン・クリスピンのオフィスに行ってみようと、近くにいたお巡りさんに、サン・クリスピンの住所を示し、ここに行くにはどうしたらいいのか聞いてみる僕。

「これはこんな所にない。もっと南の方だ」

そうか、サン・クリスピンはウィーン中心街にはないのだな。本当なら、タクシーを呼んで住所を示して連れて行ってもらうのが一番手っ取り早いのだけど、何しろ貧乏旅行なので、そのタクシー代が惜しいし(情けない……)、ぼったくりも怖い。ウィーンを散策しながら、サン・クリスピンを探そう……。

宿に戻って一休みした後、ウィーン地下鉄のU1に乗ってウィーン南方面に出る僕。そして、サン・クリスピンのオフィスを探してみる。でも、まったく見当たらない。もっとも、地図と住所を照らし合わせて厳密に探しているわけではなく(この当時はグーグルマップのような便利な代物はないのだ)、適当に歩きながら探しているので当たり前なのだが……。

このまま歩いても収穫なさそうなので、ウィーン1区に戻って、またぶらぶら散歩する。すると、公園の片隅で焼き栗屋さんを発見!

以前に雑誌にて、「パリに行ったら、路上の焼き栗屋さんがお薦め!」と言う記事を読んだ事があり、ここはウィーンではあるものの、これがあの路上焼き栗屋さんか!と嬉しくなって、思わず6つ買う。ちょうどお腹が減ってきたところなので、喜んで口に入れるが……、甘味に乏しく、それほど美味しくない。たまたま外れを買ってしまったのか、それとも焼き栗はパリじゃないと駄目なのか、どちらかは分からないけど、とりあえずがっかり。

散歩を続けていると、またもところどころで見かける物乞いさんの姿。そして今度は、さらに驚愕の光景を目の当たりにする!

なんと、
若い女性の物乞いさんの姿が!

これまで物乞いさんは見た事あれど、若い女性の物乞いなんて生まれて初めて見た。見た感じ、年齢は20代前半ぐらいであろう。当然、服も肌も、汚れて黒っぽくなっており、両膝を付いて、両手を前に差し出し、お金をくれる人を待っている。もちろん住む家もないであろう。危なくないんだろうか……。

物乞いさんがかわいそうとは言え、物を易々と与えるのは良くない。それは分かっているけれど、若い女性が物乞いをしている姿を見るのは、かなり辛いものがある……。

僕はお金を恵んであげる事を決意する。

とは言っても、僕も貧乏旅行だし、たくさんのお金を与えるのは、彼女のためによろしくない。パンが一つ買えるぐらいのお金を手渡す。

「Danke schon(ありがとうございます)……」

か細くも確かな声で、笑顔とともに、彼女はお礼を言った。これで一日ぐらいは飢えを凌げるであろう……。

もしかしたら、若い女性の物乞いなんて、僕が日本人だから驚くだけであり、世界的に見たら珍しくないのかもしれない。それでもやっぱりかわいそうだと思うし、そして何より、若い女性の物乞いが存在しない日本って、何て素晴らしい国なんだろうと心から実感する。

やがて夕方になり、宿へ引き返すと、近くにあった個人経営と思わしきお菓子屋さんで、リキュール入りチョコレイトを100g買う(量り売りしてくれる)。そして、情報収集をしようとネットカフェに向かうが、なんとPCが日本語非対応!ネットカフェ代だけ損して、宿に戻る。やむを得ず、少し割高ではあるが、宿内にあるインターネット・サーヴィスを利用しようとするが、こちらも日本語非対応……。お金を2回損してしまった。どこのPCでも日本語使えるわけじゃないんだなあと、勉強料。

この宿では、ワンドリンクサーヴィス・チケットがあり、そのチケットでビールをもらうと、部屋で飲みながら、買ったチョコレートを食べてのんびりしていると、やがて寝てしまう。

夜中に起床して、今後の計画を立てた後、また就寝。






11月10日以降から完結までは、Kindleストアより、電子書籍にて発表致しました。皆様、よろしければ、右記より、是非ご覧下さい。
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※ この作品はノンフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、すごく関係あります。
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