ルーマニアはブラショフ! これがサン・クリスピンの工房だ! Bespoke shoe maker at Brasov SAINT CRISPIN’S |
|
僕(山下大輔)が04年11〜12月にかけて行った、ヨーロッパのハンドメイド・シューズを見学する旅。僕はサン・クリスピンを追って、ルーマニアのブラショフへ向かいました。長い道のりを経て、ようやく辿りついたこの地。工房を発見した時は、ひたすら感無量でした。 サン・クリスピンは、かつてボノーラ(既製・ビスポーク両方)やカー・シューの製作も請け負っていた実力派!僕はアポイントなしで、突然押しかけたのですが、スタッフの皆様、とても親切で、作業の様子をじっくり見学させて下さいました。ちなみに、サン・クリスピンとは、靴の聖人の名前らしいです。 それでは以下から、画像とともにご覧下さい! ※左上から、2・4〜9・10〜12・15・17・18・20〜22・24〜31枚目の画像をクリックして頂きますと、拡大画像が出ます。 |
|
やって来ました!サン・クリスピン! |
工房の外観。ブラショフの住宅街にあります。赤茶色の屋根と黄緑と緑の壁のコントラスト、そしてダイヤ模様がかわいらしい! |
製甲・底付け・ポリッシングが行われている部屋。職人さんの数に対して、スペースはゆったりとられておりますね。 |
|
パタンナーであり、ビスポークの採寸担当でもある、クリスティーナ・バーブさん。上の部屋とは、別室で作業をされております。 非常に英語が堪能な方で、他国へ出張してビスポークを行う際の、会話担当でもあります。多才!今回、工房をご案内して下さったのもこの方です。 |
完成したパターンがまとめてあります。 |
完成したパターンを元にクリッキング。担当のこの職人さんは、以前はイタリアのフィレンツェにある、ボノーラの工房に勤めていたとのこと。スタッフ中唯一、オーストリア出身の方です(他の皆様はルーマニア出身)。 |
続いて製甲へ。まずは接着剤で仮止め! |
仮止めが終わったアッパー。芯材は天然素材のようですが……どうでしょう? |
そして、ミシンで縫っていきます。ただし、UチップのU字ステッチや、外羽根の縫い付け部分は、ほつれないようにキッチリ手縫いです。 |
アッパーが完成!このモデルは、一見、シームレスに見えるように、意図的にステッチを中心からズラしております。 |
こちらは、用いられるインソール。 |
釣り込み作業。ご覧のとおり、ハンドメイド。 |
そして、掬い縫いへ。 |
釣り込み、掬い縫いも終了! |
|
既製、ビスポーク、ともにこのシャンクを用いるそうです。既製靴のシャンクと言えば、素材は金属か木材で、形状は長方形ですが、なんと、サン・クリスピンのシャンクは、素材はレザーで、形状もご覧のとおりバチ型!しかも大きめです。これは普通、ビスポーク・シューズでのみ用いられる仕様!既製靴で、こういったシャンクを使用しているのは初めて見ました。耐久性、クッション性に好影響を及ぼすのでしょう。 |
なんと!自分でレバーを回転させて縫っていく、手動の出し縫い機です。僕の知っている職人さん二人(うち一人は50年以上のキャリア)に聞いたところ、こういった手動の出し縫い機は見たことがないそうです。やはり、既製、ビスポーク、ともに、この機械を使用するとのことでした。 縫うテンション、スピードを自分で調節できるのがメリット。結果、丁寧な仕事が可能なのでしょう。 ※この手動の出し縫い機は、ドイツでは珍しくないそうです。(2007年4月7日・追記)。 |
踏まず部分のコバを潰し、大きくえぐれさせて、靴をグラマラスに見せるベヴェルド・ウェイスト。この仕様の場合、踏まず部分の出し縫いは、アッパー寄りギリギリの部分にかける必要があります。この仕事は、ハンドで出し縫いを行う必要があるとの事。マシンだと、そのギリギリの部分に針が入らないそうです(※)。 しかし、マシンメイドであるジョン・ロブ・パリでは、一部のモデルにベヴェルド・ウェイストが採用されております。これは、踏まずの部分だけ、コバ不要のマッケイ製法にしているため、ベヴェルド・ウェイストが可能なのです。 そして、このサン・クリスピンですが、こちらは踏まず部分だけ木釘でソールを合わせることによりコバ不要にし、ベヴェルド・ウェイストを可能にしております。この手法だとウェルトがあるため、踏まず部分のみマッケイ製法にするよりも、何度も修理ができるメリットがあります。 また、サン・クリスピンには踏まず部分だけでなく、ソール全面を木釘で合わせているモデルもあります。このモデルでは、コバに出し縫いが入らないメリットを活かし、マッケイ製法のごとくコバの張り出しを控えめにして、華奢なルックスに仕上げることに成功しております。当然、ウェルトがあるので、マッケイ製法よりも、繰り返しの修理が可能です。ただし、ソールは返りづらくなります。 サン・クリスピン、木釘を使う利点を十分に生かしております。お見事……。 ※ ただし、上手い職人さんだと、出し縫いがマシンでも、ベヴェルド・ウェイストに近い仕上がりにはできるそうです。しかし、どうしても完全にコバを潰すことは不可能。なので、出し縫いがマシンでベヴェルド・ウェイストを謳っている場合、厳密に言えば、セミ・ベヴェルド・ウェイストと呼ぶのが妥当でしょう。 |
|
出し縫い完了!コバの仕上げ。 |
そしてポリッシング!もちろん手仕上げです。 |
こちらの部屋では、2名の職人さんがシュー・トゥリーを製作しております。右の職人さんは20歳ぐらい?若くて驚きました。通常、シュー・トゥリーは、純正であっても、大抵は別メイカーがOEM生産しておりますが、なんと!サン・クリスピンでは自社製でした。ビスポークをやっているせいもあるのでしょう。マジメですねー。 |
|
電動ノコギリで木材をカット。 |
木材には線が引かれており、それに沿ってカットしていきます。 |
完成したシュー・トゥリー。中空にして、軽くなるよう、仕上げられております。 |
シンプルに入った、サン・クリスピンのロゴ。 |
完成! |
完成! |
プラスティック製ラストは既製用。 |
木製ラストはビスポーク用。 |
スムースレザーは、全てデュプイだそうです。 |
ただし、クロコダイルなどの一部の素材は、フロリダやフィレンツェから取り寄せるとのこと。 |
クロコ革、左側の斑の大きい方は、硬いのでベルトに使用。 |
そして、右側の斑の小さい方は、柔らかいので靴に使用。カットの際には、当然、斑模様は両足ともできるだけ同じになるよう、工夫するそうです。 |
なお、サン・クリスピンの現地価格は、既製で600〜700ユーロ。ビスポークで1,360ユーロ(ただし、ルーマニアの通貨はlei)。いずれも、シュー・トゥリー込み価格です。 ビスポークの採寸は、クリスティーナ・バーブさんか、社長さんであるMichael Rolligさんが行うそうです。ただし、Michael Rolligさん自身はウィーンにあるオフィスにおり、ブラショフの工房にはいらっしゃいません。 サン・クリスピンは九分仕立てと、ハンド率が高いですが、そこからさらに、作りをビスポークに近付けようとする姿勢が見えて、非常に好感が持てました。とても真面目なメイカーだと思います。 サン・クリスピンは、日本ではご存知のとおり、有楽町にあるソヴリン・ハウスでのみ取り扱いがあります。 |
|
※ このサンクリスピンにてビスポークされたsilver streakさんから、以下のような情報を頂きました。実際は、僕の作成した内容と違う点があるとの事です。silver
streakさん、貴重な情報、ありがとうございました!(2006年6月4日・追記)。 ビスポークを注文した結果、HPのサン・クリスピンの箇所について間違い(現状と違う)と思われる箇所がありますのでお伝えします。 ベベルウェストはウッドネイルを使用したものになるのか聞いてみましたら「(HP掲載の)手動の出し縫い機はビスポークでは使わない。十部仕立て(フルハンド)なので、ウッドネイルを使う必要はない」とのことでした。 また僕は日程的に不可能だったのですが、「木型を作って6日後に仮縫いをしましょうか」というありがたい申し出も頂きました。完成後日本への発送も可能ということでしたのでヨーロッパに少し長く旅行される方は、予定さえあえば一度の旅行で仮縫いありのビスポークが作れるかもしれませんね。 なお価格は現在以下のようになっています。 Last making and trial shoe 250ユーロ BESPOKE shoes, including shoe trees 1650ユーロ 今回私は木型とトライアルシューズ代金を支払いました。残りの1650ユーロは完成時に支払えば良いそうです。 |
Shoes top |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||