ポール・スミスのビスポーク報告
Bespoke report at London PAUL SMITH
高校生の頃から大好きで、今の今まで、ずっと着続けているこのブランド!いつかきっと、ここのビスポーク・スーツを入手してみたかったのだっ!前もって値段をメールで問い合わせたところ、3ピースで950£~だという。サヴィル・ロウと比べて値段が安いのも嬉しい!

ショップに向かう途中、道に迷ってしまったので、シスターとかに道をたずねる僕。しかし、「ポール・スミスのウェストボーン・ハウスに行きたいんだけど」と聞いても、誰もが「そのお店、知らない」と言う。なので、地図を示して、道を聞くことになる。うーむ、ポール・スミスのお店、そんなに有名じゃないのかな?
ノッティン・ヒルの町並み

ノッティン・ヒルの町を抜けて……
ウェストボーン・ハウス!

到着しました!ポール・スミス・ウェストボーン・ハウス!
色んな国にあるポール・スミスのお店でも、唯一、ビスポークを受け付けているお店、それがポール・スミス・ウェストボーン・ハウスだっ!お店は閑静な住宅街にあり、お店の佇まいも、すっかりその中に溶け込んでしまっている。注意していないと、ここがポール・スミスのお店だなんて、絶対に分からないだろう。ブティックと分かるかどうかも、怪しいものだ……。
そんな外観なので、敷居の高さはまったくなし。あまりに普通すぎて、拍子抜けしてしまうぐらい。

入店すると、白を基調とした内装で、通常のポール・スミス・ショップよりも洗練された雰囲気。あまり気張らずに買い物できそう。
1階にいるスタッフさんに「オーダーをお願いしたいんですけど」と伝えると、「はい、では最上階へ向かって下さい」と言われる。あの様子だと、スタッフさんには、今日、オーダー予定の客が来ると、事前に知らされているようだ……。
ウェストボーン・ハウス近影

品の良い、ウェストボーン・ハウスの外観。見た目は普通の邸宅。こんな所にあるの?と言いたくなる場所にあります。
ウェストボーン・ハウス内

ウェストボーン・ハウス内
アポイント時間は11時だったが、道に迷ったせいで10分ほど遅刻。
「Nice to meet you」
最上階に着くと、そう声をかけられ、担当者の方二人とご挨拶。遅刻を詫びると、
「いやいや、全然遅れてないじゃないか」
と快い返事。
「英語はできる?」
デザイン等の打ち合わせ担当である、マネージャーのクリストファー・ターリングさん(ロンドンのセレクトショップ「ブラウンズ」の元バイヤー)にそう聞かれる僕。
「すいません、少ししかできません」
僕がそう答えると、極力、簡単な英語で話してくれる。
「ビスポーク・スーツが欲しいのか?」
「そうです。型紙から起こして、生地も選択してで作って下さい。3ピースの、3つボタン、中一つがけが欲しいです」
「よし、それじゃあ、どこで着るんだ?日本か?ロンドンか?」
「日本です」
「日本なら、9~11オンスがいいよ。それ以上だと、日本には合わない。日本は蒸すでしょう」
そう言って、生地見本を出してくれるクリストファーさん。
「君は、ロンドンに住んでるの?それとも日本?」
「日本です」
「そうか。ロンドンには仕事に来たの?」
「いえ、観光です」
そんな事も話した。
「僕が欲しいのは、ネイヴィーの……」
「ネイヴィー・ブルー?」
「いえ、ダーク・ネイヴィーです。そして、白のストライプがいいです」
すると、候補と言えるのを、いくつか出してくれる。
「ストライプの幅はどれくらい?」
そんな事を聞かれつつ、生地は濃紺に白のペンシルストライプにアッサリと決定。
「うん、良い選択だ。これはとても良い生地だよ。最高のクォリティだ」
誉めてもらう僕。しかし、生地ブランドはどこなのか覚えてない……。イギリス製なのは確か。他に、ロロ・ピアーナも置いてあったのは記憶している。

続いて、ライニング生地の選択。
「ライニングはどれがいい?色んな色があるよ。こんな柄物もOKだ」
そう言って、ペイズリー柄を見せてくれるクリストファーさん。
「ライニングはシルクのみだ。あと、忘れてはいけないのは、ウェスト・コートの背中も、これになるからね」
「できれば、青系がいいんですけど……」
「青系なら、このあたりだ」
クリストファーさんに指し示される。しかし、結局僕が選んだライニング生地は、「ガーネット」と名の付いた、赤系のモノ。ちょっと妖しさ漂う色合いが気に入ったのだ。
「ウェスト・コートの背中もこれになるけど、いいか?」
念を押されるが、OKと答える僕。
「それじゃあ、ここに名前・住所・電話番号を書いてね」
クリストファーさんにそう言われて名簿帳を出され、書き込む僕。クリストファーさんは、僕の名前を指して言う。
「これ、何て読むの?ダイスキ?」
「いいえ、ダイスケです」
「ダイスキ?」
「いえ、ダイスケです」
「おお、ダイスケか」
"ダイスケ"とは、英語圏の人にとっては読み辛いのだろうか?なんとか伝える。しかしその後も、クリストファーさんは僕の事を「ダイスキ」と呼んでいた……(笑)。



ウェストボーン・ハウス、ガストンルーム

ウェストボーン・ハウスの最上階。ここがビスポークを受け付ける部屋になります。
ウェストボーン・ハウス、ガストンルーム

生地見本が置かれております。こちらの台の上で、型紙作成等を行っているようです。なお、巻いた状態で立て掛けられているのは、ライニング用の生地です。
続いて、デザインの打ち合わせに入る。とは言っても、僕の会話能力に限界があることもあって、内容は簡単なもの。僕自身も、あまり細かい事を言うつもりはなかった。極力おまかせにして、"ポール・スミス流"を先方に存分に発揮して欲しかったのだ。
「3ピースの、3つボタンでいいね?」
クリストファーさんから念を押される。

ベントはどうするか?→サイドベンツ
フラップの有無→無
裾はダブルかシングルか?→ダブル
トラウザースのポケットは右か左か?→右
プリーツ→二つ
ジャケットのポケットの数→胸ポケットと、あとは左右の脇に一つずつ

本当に基本的な事だけ質問されて、答える僕。打ち合わせの最中にクリストファーさん、僕がブレーシズをしている事に気付く。
「Oh~,very british~」
やや驚きの表情をしながら、ニッコリ笑うクリストファーさん。そして、ブレーシズ仕様と注文書に書き加えた。表情から察するに、イギリスでもブレーシズボタンをつけている人は珍しいようだ……。
ライニングに関してはとくに聞かれず、勝手にハーフライナー(背抜き)となっていた。やはり、東京の気候を意識しているのだろうか?
ラペルに関しても聞かれず、とくに指定がなければ、自然とノッチドになるようだ。もっとも、僕の指定した仕様が、竹下さんに作ってもらったスーツとまんま同じだったので(ハーフライナー以外)、「これと同じでいいのか」とクリストファーさんも感じて、あえて聞かなかったのかもしれない……。

「これで、おいくらになりますか?」
ひととおり打ち合わせが終わると、念のため聞いてみる僕。
「1,950£」

なぬ!

最初に聞いていた話では、950£~という事だったではないか!予想以上の高値に仰天する僕。そりゃあ、僕も最安値で注文しようとは思っていないから、予算はある程度多く見積もって来たけど、まさか2倍になるとは思っていなかった……!どうしてそんな値段になるのか?僕が選んだ生地が良すぎたのか?それとも事前の質問の際に、何か誤解があったのか?いずれにしても、1,950£となると、さすがにキツイぜっ。どうしよう……。

「すいません、予算オーヴァーなんです」
正直に言う僕。な、なんてカッコ悪い……。貧乏人は辛いなあ。やっぱり、身分不相応な事、そうそうするもんじゃないなあ。
「そうか……」
クリストファーさんも、ちょっと困った顔。
「じゃあ、2ピースでどうだ?これなら、1,500£だ」
そう提案してくれた。これならギリギリ予算内なので、なんとか承諾する。しかし、我ながらみっともない……。

続いて、採寸に移る。ここで、担当はお若いトムさんに交代。
「いつもどおりでいて下さい」
そう声をかけられ、肩の辺りを触られる。
「左肩が下がってますね」
これはオーダーの際に、僕がいつも言われること。採寸箇所は、着丈、首の付け根から地面までの丈、腕の長さ(腕を肩と水平にして、肘を直角に曲げた状態で採寸)、肩幅、ゆき丈、足、股下、胸囲、腰、ヒップ(ヒップだけ、メジャーを少々たるませて採寸)。ただし、記憶の抜けがあるかも……。
クリストファーさんとトムさん

今回、接客して下さった、クリストファーさん(左)とトムさん(右)。
ポール・スミスのビスポークサンプル

店内に飾られていたサンプル。モード系ですね。
「仮縫いはいつにする?またロンドンに来る?」
クリストファーさんにそう聞かれる僕。
「12月28日には来れます」
ひょっとしたら、旅の途中でお金が尽きちゃって、日本に帰国している可能性もなきにしもあらずなのだが、まあ、その時はまた、連絡すればいいだろう……。
「28日?28日はクリスマス休みだ」
「それなら、29日でも大丈夫です」
「29日ならOKだ。29日のいつにする?」
「うーん……、それじゃ、13時で」
僕にそう言われて、クリストファーさんは、予定表に僕との仮縫いの約束を書き込む。その予定表を覗いてみると、結構な人で埋まっている。どうやらポール・スミスのビスポーク、人気があるようだ……。

仮縫い日時が決まると、クリストファーさんは、奥からポール・スミスのミニカーを持って来て下さり、ニッコリ笑って、僕に手渡す。
「Present for you」
ビスポークの記念に下さるらしい!やった!嬉しいぞ!箱の裏を見ると、20£の表示がある。どうやら、本来は売り物らしい。4,000円の品がタダとなると、なお嬉しい~(笑)。
ポール・スミスのミニカー

プレゼントして頂いた、ポール・スミスのミニカー
ポール・スミス・ウィメンのショップ

ウェストボーン・ハウスの向かいには、ポール・スミス・ウィメンのショップもありました。
そして、クリストファーさんの名刺を受け取り、それを財布にしまおうとすると、いきなり声をあげるクリストファーさん。
「おお!すごく良い財布だな!素晴らしいクォリティだ!(very good quality!)」
その財布は、万双のブライドルレザーのもの。誉められて嬉しい僕は、照れてしまう。
「はい、日本製のモノです。万双っていいます」
「ほう、そうか……これは凄いぞ。素晴らしいクォリティだ」
驚嘆の目で、僕の万双の財布をまじまじと見つめるクリストファーさん。
「これはユナイテッド・アローズで扱ってるか?」
ユナイテッド・アローズの名前が、クリストファーさんの口からサラッと出てくるのに、ちょっと戸惑う僕。やはり、ユナイテッド・アローズはロンドンの業界人にも知られているようだ……。
「いえ、ユナイテッド・アローズにはありません。東京の……上野ってとこだけで売られています」
「そうなのか……あ、ちょっと待ってろ」
そう言って、デスクから名刺を取り出して来るクリストファーさん。
「この人知ってる?ユナイテッド・アローズの人で、私の友人だ」
僕に名刺を見せてきた。その名刺にはなんと、
"栗野宏文"とある!!!
「お~!ヒロフミ・クリノ!」
驚く僕。
「おまえの友人か?」
「いえいえ、違います。でも僕、この人、好きなんです」
栗野さんも、ひょっとして顧客なんだろうか?クリストファーさんは仲良さそうだ。

最後に会計へ。ディポジットとして、最初は半金を収めるように言われていたが、先方のご好意で?500£でOKとのこと。

「それじゃ、12月29日13時に、またお会いしましょう」
最後のご挨拶をして、お別れ。かかった時間は40分ぐらい。僕にコミュニケーション能力が不足していたせいもあって、あまり時間はかからなかった。

その後、ウェストボーン・ハウス周辺を写真撮影したりして、ブラブラする。外から、ウェストボーン・ハウスの最上階にいるクリストファーさんと目が合うと、クリストファーさん、大きく手を振ってくれたのが嬉しかった……。

(掲載画像をクリックして頂きますと、拡大画像が出ます)
PAUL SMITH Westbourne House MAP

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