国際靴職人技能コンクール2007年
International Efficiency Contest of the Shoemakers 2007
1968年から3年に一度、ドイツのヴィースバーデンにて開催される、「国際靴職人技能コンクール」(ドイツ語ではInternationaler Leistungswettbewerb des Schuhmacherhandwerks)、今年(07年)は3月24・25日に開催されまして、その様子を見学して参りましたので、ご報告させて頂きます。このコンクールは、ウィーンのゲオルグ・マテルナ親方が、連続して金メダルと名誉賞を獲得している事でも知られておりますね。
このコンクールはインター・シュー・サーヴィス(Inter Schuh Service、略称ISS)と言う、靴関連会社の見本市の一環でして、会場もその見本市内にあります。

まず、コンクールは以下の5部門に分かれます。
・スタンダード靴部門(Standard Schuhe)
・ファッション靴・豪奢靴部門(Modische und Luxus schuhe)
・スポーツ靴・登山靴部門(Sport und Wander schuhe)
・修理部門(Reparaturarbeiten)
・練習生部門(Nachwuchs)
練習生部門では、ユーズドのメンズ・シューズのハーフソール交換と、レディース・シューズのヒール交換を行い、その出来栄えで評価されるようです。
コンクールの参加費は、1足の提出につき55ユーロ。修理部門は65ユーロ。練習生部門は40ユーロ。ただし、ドイツ国外からの出展の場合は23ユーロ増となるそうです(前大会より少々値上がりしたようです)。

出展されている靴のレヴェルについては様々です。カッコ良い!上手い!と素直に賞賛できる靴もあれば、ちょっとこれは……と、苦笑せざるをえない靴もあります。
出展者には金メダル、銀メダル、銅メダル、参加証書のいずれかが授与され、中でも特に優秀な方には、名誉賞としてトロフィーが送られます。メダルや名誉賞受賞者はそれぞれ複数おりまして、各一人だけというわけではありません。

受賞については、数名の審査員さんたちによるポイント制で決められるようです。ただし、僕の見たところ、とりわけ上手くない靴でも金メダルだったり、逆に上手い靴、素敵な靴でも銅メダルだったりして、ちょっと基準がハッキリしません(笑)。もちろん、素晴らしい靴が順当に金メダルの場合もございます。審査員の方の独断と偏見もあるように感じられましたので、靴の出来については、賞の結果よりも自分の目で判断するべきだなと思いました。

ただ、さすがに名誉賞を受賞された8名の職人さんは、どれも目を引く、良い作品を出展しておられました……。

そして、今回のコンクールで驚いたのは、日本人職人さんが二名も出展されている事!まずはそのお一人、四之宮玄騎さんをご紹介させて頂きます。

※ 2〜5枚目の画像をクリックして頂きますと、拡大画像が出ます。



金メダル&名誉賞受賞 四之宮玄騎
Genki Shinomiya
四之宮玄騎さんの賞状

金メダルと名誉賞を受賞された日本人職人さんが、この四之宮玄騎さんです。ドイツのケルンにあるオーソペディック・ビスポーク・シュー・メイカー、ラルフ・ポッペ(雑誌「ドルソ」の02年冬号でも紹介されております)にてお勤めされております。ドイツには3年半いらっしゃるとの事(07年3月時点)。
四之宮さんは、ドイツのマイスター制度(※注1)における「整形靴職人」の「職人」資格をお持ちでして、さらにこれからは「親方」を目指すそうです。(※注2)

僕が個人的に凄いと思ったのは、なんと四之宮さん、工房では
ラストメイキングにも携わっているとの事。何しろ、靴作りにおいてラストは命。海外のビスポーク・シュー・メイカーで勤務経験のある日本人職人さんでも、ラストメイキングまで任されている(いた)方は少ないです。まだ20代後半とお若いのに、素晴らしいですね。さらに四之宮さんは、サン・クリスピン社長のマイケル・ローリックさんにもその腕を見込まれ、07年4月に、一週間ほどルーマニアにあるサン・クリスピンの工房にてお仕事もされたそうです。

ちなみに、四之宮さんの親方であるラルフ・ポッペさんも、過去、このコンクールにて何度も金メダルを受賞されているそうです(今回は出展しておりません)。



(注1※):よく知られておりますが、ドイツではマイスター制度により、靴職人にも国家資格が存在します。そして靴職人の場合、「整形靴職人」と「靴職人」の2種類に区別され、その職人のランクは、「徒弟(Lehrling)」、「職人(Geselle)」、「親方(Meister)」、「上級親方(Obermeister)」の四段階に分かれます。
ただ、資格取得にはお金がかかるため、腕は良くとも資格に興味がない職人さんは少なからずいるとの事。しかも、「上級親方」になると、(その地域の)職人組合長として監督業になるため、腕前自体は現場にいた頃よりも衰えていたりするとか……。
以上の事から、決して職人のランクと腕前は直結せず、「職人」や「徒弟」でも、「親方」より上手いのは珍しくないそうです。やはり、資格よりも腕を上げる方が大事と考えるようですね。とは言え、資格取得には、ある一定レヴェル以上の技術と理論と経験が必要なのも事実です。何しろ、ドイツでは国家試験ですから。
なお、アクセル・ヒィマーさんのように、整形靴職人と靴職人、両方の資格をお持ちの方もいらっしゃいます。
また、04年1月1日からマイスター制度の規制緩和が行われ、「靴職人」は「親方」資格がなくとも独立開業が可能となりました。しかし、「整形靴職人」は、現在も独立開業には「親方」資格が必要でして、その資格取得にも、「職人」資格を持って3〜5年の実務期間が必要です。

(注2※):08年5月、整形靴親方資格を取得されました。(09年5月22日追記)
四之宮玄騎さんの靴

こちらが金メダルを受賞された靴です。ファッション靴・豪奢靴部門での出展でした。ラストは四之宮さんご自身の足(エジプト型)を基に、ピエール・コルテが注目されだした時期に作成されたとの事。なので、その影響もあって、ラストの形状はコルテ風だそうです。ノルウィージャン・ウェルテッド製法と言う事もあり、エレガントさよりも無骨さを出したかったともお話しされておりました。製甲(アッパー作成)は外注されたそうですが、素材にはカール・フロイデンベルグを使用と、気合いが感じられました。
この靴は一週間で完成されたそうですが、締切ギリギリだったそうで、「最終日は徹夜しました」と四之宮さんは話しておられました(笑)。
四之宮玄騎さんの靴

赤の出し縫いとは珍しいですが、アクセントとして効いていますね!これはヴァーシュ等のようにステッチを三本を入れているそうで、中心には黒ステッチ、両脇には赤ステッチと言う、芸の細かさです(笑)。確かに、赤色の間に黒が見えて、さりげないオシャレ心ですね。ナチュラル・カラーのコバとのコントラストも映えます。
四之宮玄騎さんの靴のソール

華麗に装飾されたソールがお見事です!四之宮さんのデザインセンスが存分に発揮されておりますね。ただし、四之宮さんによると、この装飾に機能性はなく、「重くなり、ソールの返りも悪くなる」可能性があるそうで、あくまでコンクール用と言う事ですね。
返りに影響を及ぼさない箇所なら、隠れたお洒落としてこの装飾も良いかもしれませんが、実際に行うとなると、別料金が発生するそうです。それだけ手間隙がかかると言う事でしょう。
四之宮玄騎さんの靴

チゼルトウにサイドのエッジをきかせたフォルムは、ピエール・コルテへの意識が感じられますね。
四之宮玄騎さんのネーム・プレート

コンクール会場での四之宮さんのネーム・プレートです。下にある「Gold」とは、もちろん「金メダル」の意味です。
また、名誉賞にはそれぞれ名前が付いておりまして、四之宮さんは「ライン・マイン・ホール名誉賞」でした。ライン・マイン・ホールとは、コンクール会場の名前です。


四之宮さんの授賞式の様子です。手渡されたトロフィーが名誉賞受賞の証です!
※ 今回のページ作成には、ドイツにて修行された整形靴職人、クリスエケンジさんにもご協力頂きました。どうもありがとうございました。






Shoes top
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送