GEORG MATERNA

2eyelet derby plain toe
ゲオルグ・マテルナ 2アイレットプレーントゥ

モデル名不明、ゲオルグ・マテルナの2アイレット外羽根プレーントゥです。
NEROと同様、こちらもダブルソール、チャネルソール、マッケイ製法、インソックスは全敷きといった仕様になっています。マッケイ製法に関しては、これはあくまで日本への輸出用として作っているだけのようでして、ウィーンにある本店ではウェルト製のもあるようですね。また、以前に、「ウィーンの本店にて購入」というゲオルグ・マテルナの既製靴を見たことがあるのですが、こちらはチャネルソールにもなっていませんでした。日本輸出に際しましては、細かい仕様は別注されているのですかね?

一般的に、マッケイ製法の場合、ベルルッティやア・テストーニのように、軽く、華奢な雰囲気に仕上げるものですが、このゲオルグ・マテルナは重く、またゴツイ雰囲気で、いわゆる“らしくない”仕上がりですね。
マッケイ製法の場合、縫い目から水が染み込みやすいのが欠点とされていますが、こちらはチャネルソールのうえダブルソールになっていますから、そういうことがないのは安心です。



ヒールカウンターがない靴の場合、大抵は左上画像(エドワード・グリーンのチェルシー)のように、踵中央でパーツを縫い合わせて完成となります。しかし、右上画像のマテルナは、ご覧のとおり、踵中央部に補強パーツを縫い当てておりますね。
どうもこれは、オーストリア、ドイツ、ハンガリーと言った、中東欧圏のハンドメイド・シューズの独特の仕様のようです(もちろん、全てではありません)。KAさんのバリントやルドルフ・シェア&ゾーネもこのようになっておりますし、ブダペストのラズロ・ヴァーシュ氏の名著、「Handmade SHOES FOR MEN」でも、"カウンターのない靴には、バックストラップを当てて、シームを隠す"と言う記述がございました。

とにかく中東欧の靴は頑丈に作ろうとする傾向のようで、その意図があっての補強パーツと思われます。

ゲオルグ・マテルナ木釘の跡ゲオルグ・マテルナの場合、マッケイなのにダブルソールということで、地面に設置する側の、二枚目のソールをどう合わせているのか、疑問が残るところですが、これはどうも、木の釘を打ち込んで合わせているようです。詳しくは知らないのですが、この木釘は、現代ではあまり使われなくなった、昔ながらの手法みたいですね。
右にあります、アウトソール周辺の拡大画像をご覧頂きたいのですが、矢印の箇所に、うっすらと丸い痕があるのが確認できますでしょうか(画像をクリックして頂ければ、拡大表示されます)?チャネル仕上げのため隠れてしまっているものの、この丸い痕が、木釘を打った痕かと思われます。
前述した、チャネル仕上げになっていないマテルナのソールには、木釘の頭がハッキリと出ていました。
ゲオルグ・マテルナと同じく、オーストリアのシュー・メイカー、ルーディック・ライターでも、この木の釘は使用されているそうなので、東欧諸国では未だに残っている手法なのかもしれませんね。


ただ、前述した方とは、また別の方が所持しているゲオルグ・マテルナを見たところ、そちらのソールはチャネル仕上げが剥がれてしまっておりまして、そのソールからは、なんと木釘ではなく、縫い糸が見えていました。木釘で合わせている靴、糸で縫い合わせている靴、ゲオルグ・マテルナは両方存在している、ということでしょうか?謎ばかりですね。


ちなみに、イギリスのリーズに、マーク・ビービーというヒストリカルシューズ職人さんがいらっしゃいます(靴専門雑誌「シューフィル」13号に紹介されています)。ヒストリカルシューズというのは、現代では履かれる事がなくなった、昔々の靴のことなのですが、そのマーク・ビービー氏は、デザインだけでなく、製法まで復刻させているそうで、そのマーク・ビービー氏の作る靴にも、木釘は使用されているようです。群馬県に、そのマーク・ビービー氏に師事したヒストリカルシューズ職人さんがいらっしゃいますが、その方の作る靴にも、木釘は使用されていました。


かの有名な映画、「黄金狂時代」で、主演のチャップリンが革靴を食べる、有名なシーンがありますが、そのチャップリンがナイフとフォークを使って、アッパーとソールをはがすときにも、どうも木釘?らしきものが見えます。この映画が製作されたのが1925年らしいですから、やっぱりこの頃って、木釘を使って靴を作っていたのかな?って気がしますね。
ただ、その映画を見る限りですと、木釘を使ってアウトソールを合わせていると言うより、木釘を使ってアッパーとソールを合わせているように見えます。ますます謎なのですが、素人の僕では詳細まで分かりかねますので、どなたかご存知の方、教えてやって下さい。


ゲオルグ・マテルナ インソール
全敷きという事もあって、構造が分かりにくい事もあったため、靴職人を目指されているMさんにお願いして、中敷きを剥がしてもらいました(ありがとうございました!)。

まず気づく点が、ハンドで釣り込みを行っている場合にあるはずの、釘跡が見当たりませんね。という事は、釣り込みはマシンで行っているという事なのでしょうか?NEROのアッパーには皺が寄っていますし、ハンドで行っているとすれば、皺ができないように丁寧に釣り込むでしょうから、そう考えると、やはり釣り込みはマシンで行っていると考えるべきなのかもしれません。とは言うものの、インソールの土踏まず部分の盛り上がりは素晴らしいので、まあ、機械釣込みだろうと、とくに気にしてはおりません。
ゲオルグ・マテルナ インソール2
一方で、出し縫いのピッチには少々バラつきが見られるので、こちらはハンドで行っているのではないでしょうか?

それと、アウトソールから打ち込まれているはずの木の釘ですが、インソール部分からは、その釘は見えていませんね。とすると、作りとしては、まずアッパーと1枚目のアウトソールを糸で縫い合わせた後、2枚目のアウトソールを合わせ、この2枚目のアウトソールを木釘で固定しているのだと推測されますね。



さて、この木釘についてですが、とある靴メイカーの方に伺った話によると、もともとこれは、軍靴に用いられる手法なのだそうです。ナポレオンに対しても、軍靴を製作していたということでしょうか?
考えてみると、ゲオルグ・マテルナと同じく、木釘を使用して製作されているルーディック・ライターも、もともとは軍将校用の乗馬ブーツや、警察官の靴を製造していたメイカーだそうですね。実際、ルーディック・ライターのロゴマークには、騎馬兵の絵が入っていますし。
軍靴がルーツの靴として、他ブランドで有名なのが、J.M.ウェストンのド・ゴールですが、このド・ゴールも、ダブルソールにつま先と踵に金属プレート付きと、ゲオルグ・マテルナと共通する点が多いですね。となると、やはりゲオルグ・マテルナのルーツは、軍靴にあるのかもしれません。もっとも、ゲオルグ・マテルナはシングルソールの靴も製作していますから、一概には言いきれないですけれども。

なぜ、軍靴に木釘を用いるのか?
なんでも、糸でソールを縫い合わせるとなると、戦場での苛酷な使用に耐えることができず、アウトソールに入っているステッチが切れてしまうのだそうです。そこで、木釘でソールを合わせるようなったとか。さらには日本でも、昔は木釘が用いられる事があった、と伺いました。では、なぜ金属の釘ではなく、木釘を用いるのかと言うと、理由は以下の三つが挙げられるそうです。

1・柔軟性がある。つまり、返りが良い。
2・金属よりも腐りにくい。
3・木は濡れる事により膨張する。つまり、濡れた地面を歩く事により、ソールに打ち込まれた木釘は膨張し、よりソールはガッチリ固定される。

これらのことから、木釘でソールを固定することによって、もたらされる効果は、やはり耐久性の高さが大きいようです。耐久性を高めるなら、ウェルト製にした方がなおベストなのでしょうが、にも関わらず、僕の所有している2足がマッケイ製法になっているのは、これはドレスシューズとして履いてもらいたいがため、外観を意識したせいかな?と推測しています。また、コストの削減とも考えられますね。
さらにこのゲオルグ・マテルナは、先芯、月型芯とも異様に硬く、今まで見てきた靴の中でもダントツに硬いです。おそらく、ビスポークと同様に芯材にも革を使い、さらにそれを鍛えあげて繊維を密にして、硬く仕上げているのだと思われます。ソールも減りの少ない、ギチギチに硬い素材を使っておりまして、芯材、ソールともに、この硬さはもしかしたら既製靴では一番かもしれません。キッドのライニングといい、踵の補強パーツといい、やはりゲオルグ・マテルナは耐久性を重視した靴作りを行っているのでしょう。







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