GEORG MATERNA

“NERO”
ゲオルグ・マテルナ ネロ

オーストリアはウィーン発のビスポーク・シュー・メイカー、ゲオルグ・マテルナです。もっとも、僕の持っているものは、オーダー品ではなく、既製靴ですけどね。あまり日本では紹介されていないブランドなので、まずはブランドの説明からさせて頂きます。
以下は、ゲオルグ・マテルナ紹介文の日本語訳です。


1927年にマイスター(親方)ベラ・ナジはウィーン第1区ジンガー通り16番地にオーダー製作所を創設しました。この名声高い企業はゲオルグ・マテルナが引継ぎ、ウィーン第1区マーラー通り5番地に移転しました。この企業の特徴は、過去においても現在でも、最高級の、流行に左右されないエレガンスを持つ婦人靴および紳士靴を手作りで製造していることです。あらゆる種類のクラシックな、最高級の通常靴(直訳:街路用の靴)、スポーツ靴、および夜会用の靴を製造しています。靴はお望みのどんな色及び革の種類でもボックスカーフ、シェブロー、スコッチグレーン、ペッカリーズ、象、だちょうまたは鰐革など、製造致します。また3種類の靴底の厚さがあり、金属プレートまたはゴムコーナーをつけることもできます。
またお客様は、待ち時間なしに、手作りの靴をお買いになることもできます。様々なサイズ、幅の数種類のクラシックなモデルの在庫があります。商品券は、素晴らしい贈り物のアイディアとして定評があります。
ゲオルグ・マテルナは1962年にマイスター(親方)試験に合格し、1980年以来、公認専門家及び鑑定家であり、1982年以来、製靴手工業マイスター(親方)試験監査委員会の委員長務めています。1983年に彼はヴィースバーデン(西ドイツ)における「国際靴職人技能コンクール」で2つの金メダルを獲得しました。1984年には、マテルナ氏に国から勲章が授与されました。1986年に彼は再度ヴィースバーデンの「国際靴職人技能コンクール」に参加し、名誉賞と2つの金メダルが授けられました。
マテルナ・オーダー靴製作所はオーストリア国外でも広く知られており、伝統的な手作りの最高級の靴に重きを置かれているお客様に製品を納入しています。とりわけ、ヨーロッパの貴族、国内・国外の政治家、外交官、また経済界、学会、芸術の分野を代表する方々など、多数の有名人の方々がマテルナのお客様となっておられます。


「国際靴職人技能コンクール」っていうのが、どのくらいの規模のコンクールなのかは分かりませんが、なんとなく、「なんだか凄そう」という説得力はありますね。さらにゲオルグ・マテルナ氏は、1989年に2つの金メダルと2つの名誉賞を獲得としたと伺っています。
上記にあるベラ・ナジという親方の系譜を辿っていくと、かのナポレオン(やはりナポレオン・ボナパルト皇帝でしょうか?それともナポレオン三世?または別のナポレオン?詳細は不明です)の靴を作っていた職人さんに当たるそうで、実際、ウィーンにあるゲオルグ・マテルナの本店に行けば、ナポレオンが履いていた靴も飾られているそうです(実際に僕は行ったことがないので、人づてに聞いた話です)。
アッパーに使用されている革ですが、カーフなのにコードヴァンのような艶があり、もしくはガラス加工にも見え、独特の質感ですね。ア・テストーニのアッパー素材にも似ているようにも見えます。どこの革だろうか、ずっと気になっていたのですが、ある専門家の方に見てもらったところ、「おそらく、イタリアン・カーフだろう」との事です。

年間生産数は500足のみと聞いていますが、これは既製靴の話なのか、それともビスポークの話なのか、どちらなのでしょうね?フォスター&サンのビスポーク靴年間生産数が350足ぐらいだそうですから、ビスポークだとすると、そのくらいでおかしくないのですが、仮に既製靴の年間生産数が500足のみとすると、職人さんの数にもよるのでしょうが、これはものすごい少なさです。もっとも、既製靴に関してはラストは一つだけのようですし、本来はビスポーク・シューメーカーですから、既製にはそれほど力を入れていないのでしょう。
ちなみに、ビスポーク靴店が既製靴を展開する場合、生産は別工場のOEMとなるのが普通ですが、ゲオルグ・マテルナの場合は、どうも自社で作っているようです。聞いた話ですと、昔のヘンリー・マックスウェルも(ニュー・ボンドストリート時代?)、既製も自社で作っていたそうです。


日本において、このゲオルグ・マテルナを取扱っていたお店は、僕の知っている限りですと、コイーバ、ユナイテッド・アローズ、ブレイズ・オブ・サヴィルロウ、ワールド・フットウェア・ギャラリー、ブルーロンド、あとは店名は知らないのですが、大阪にも、扱っていたショップがあったようです。以前に一度だけ、ユニオン・ワークスにて格安で販売されていた時期がありましたが、これはその大阪でのショップの売れ残りが流れに流れて、ユニオン・ワークスに行きついたものらしいです。
そして現在では、前述したコイーバ(お店は現在、三宿にあります)と、銀座のソヴリンハウスでのみ、取扱いがあるようです。こちらは革素材指定のセミ・オーダー式で、ご興味のある方は試してみてはいかがでしょうか?リペアに関しても、コイーバを通せば純正品が置いてあるようです(作業はユニオン・ワークスにて行われます)。

ちなみに、ゲオルグ・マテルナ本店の住所は、1010ウィーン1マーラー通り5番地だそうです。
ご興味のある方、訪ねてみてはいかがでしょうか?僕も、一度は是非伺ってみたいですね。ただ、こちらはいささか古い情報ですので、現在は違っている可能性もあります。ご了承下さい。ちなみに、現地での既製靴の価格は、為替によるんでしょうけども、日本円にして7万~7万5千円ぐらいだそうです(あくまでも、人づてに聞いた話です)。それと、もし既製靴を買われる場合、どうも同じサイズ表記でも、ハンドメイドであるがゆえか、大きさにバラつきがあるようです。気をつけて下さい。



実際に履いたうえでの個人的感想を述べますと、靴自体の持つ立体性は、既製靴の中でも最高レヴェルにあると思います。とくに踵から踏まずへ流れるフィット感は素晴らしいですね。ただ、マッケイ製法で中物が入っていないため、クッション性に乏しいのが残念です。


また、ライニングはキッドを使用しています。通常のレザーライニングと比べて吸湿性は劣るのですが、キズはつきにくく、こちらの方が耐久性はあるようです。どちらが良いのかどうかは、価値観の問題でしょうね。


ゲオルグ・マテルナ、トゥのアップ

ゲオルグ・マテルナの特徴として、独特のトウラインもあげられると思います。細くはありませんが、丸すぎないラインを描くエッグトゥと、ショートノーズがあいまって、愛嬌漂う表情を見せていますね。"東欧の靴"としてのアイデンティティを感じます。
ゲオルグ・マテルナ、ヒールのアップ

ヒール側面部分には、釣り込み時にできてしまったであろう、皺が寄ってしまっています。実際の着用には問題ないので、とくに気にしていないのですが、仕事としては、ちょっといいかげんなのかな?という気はしますね。もしジョン・ロブ・パリ(既製)の場合、こういう皺があったりすると、サブスタンダードにまわされるそうです。

ゲオルグ・マテルナに関しての説明は、次項に続きますです……。


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