ゴールウェイの洋服店とアランセーター
Clothing shop at Galway & Aran sweater
アイルランド西部の中心都市、ゴールウェイ。この街はアランセーター発祥の地、アラン諸島と近いせいでしょう、セーター・ショップが充実しております。もっとも、そのほとんどは観光客をターゲットにした廉価なセーターを販売しているのですが、そんな中でも、個性が感じられるショップがありましたので、ご紹介させて頂きます。

なお、日本で手編みのアランセーターと言えばインヴァーアランが有名ですが、アイルランドではまったく見かけませんでした(笑)。考えてみれば、インヴァーアランはスコットランドのブランドですし、誕生も1980年代と若い。アランセーターの本場であるアイルランドが、わざわざ輸入するわけないですよね。
ビスポーク・テイラー Louis Copeland &Sons
ルイス・コペランド&サンズの店舗

ゴールウェイ駅から近いMerchants Road沿いにあり、100年以上の歴史を持つセレクトショップ、ルイス・コペランド&サンズです。帰国してから分かったのですが、このゴールウェイの店舗は支店であり、ダブリンにも4軒、店舗があるそうです。
取り扱いブランドはカナーリ、エルメネジルド・ゼニア、ポール・スミス、ガント、バーバリー、アクアスキュータム、ファッソナブルと、嗜好もお国も様々。もちろん、オリジナル商品もあります。
元々はビスポーク・テイラーだった事もあり、ビスポーク・スーツも受け付けております。価格は1,195ユーロ〜。アイルランドのチャールズ・ホーギー元首相も顧客だったそうです。




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アランセーターショップ FALLER'S
ファラーズ

アランセーターとツイード製品が充実のお店、ファラーズです。住所は25 High St., Center, Galway City。
アランセーターは機械編みと手編み、両方販売されておりまして、見分け方として一番分かりやすいのは、やはり価格ですね(笑)。安値であれば機械編み、高値であれば手編みです。
機械編みより手編みの方が、模様の凹凸がはるかにクッキリとしており、着用時の見栄えがまるで違います。手編みはセーターの目がグッと詰まり、弾力もありますし、暖かいです。ただ手編みの場合は一着ごとの品質が一定しませんので、それぞれをよく比較する必要があります。それでも機械編みよりクォリティは高いですが……。
ちなみに、日本語がほんのわずか話せる店員さんがおりまして、「お名前は何ですか?」と日本語で聞かれて驚きました。高校生の時に選択科目で習ったそうで、観光客目当てで学んだわけではなさそうです(笑)。




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アイリッシュ・セレクトショップ O'Maille
オモーリャ

こだわりのアイルランド製衣料を取り揃えたセレクトショップ、オモーリャです。住所は16 High St., Center, Galway City。観光客目当てのショップが多い中、ゴールウェイではもっともポリシーが強く感じられるお店でした。
こちらの店内は脂の匂いが強烈です。バターと同じ匂いが充満しております。それだけ脂を含んだ、上質のセーターやオイルド・ジャケットが多いという事でしょう。
「ウチはアジア製(のアランセーター)は置いてません。正真正銘のアイルランド製です」
オーナーのアン・オモーリャさんはそう話しておられました。他店と比べて少々高値なのですが、確かに良いセーターでした。こちらのお店と直接契約をしているニッターさんが編んでいるそうで、そのニッターさんの中には、「アラン諸島出身者もいる」との事でした。




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ビスポーク・テイラー D.J.BOYLE & SON
D.J.ボイル&サンズ

ビスポーク・テイラー、D.J.ボイル&サン。こちらはゴールウェイではなく、レタケニーというアイルランド北の田舎町にあります。小さい町なので、メイン・ストリートを歩けば店舗はすぐに見つかると思います。
もっとも、このお店ではビスポークよりもリペアを主に行っているようです。3名の女性職人さんが修理作業をしておられまして、仕立てについては、その職人さんとは別に担当者がいるようですね。お値段は900ユーロ〜。

僕がアイルランドのテイラーを見て気になったのは、どのお店も、オーダーメイドは細々と行っているんですよね……。主力は既製服だったり、このお店のようにリペアだったりで。アイルランドでも、ビスポークの文化は風前の灯火なのかなと感じました。
アラン諸島のセーター・ショップ
Sweater shop in Aran Islands
イニシュモア島

アイルランドでアランセーターを購入するなら、僕としてはダブリンのクレオか、ゴールウェイのオモーリャが良いと思いました。しかし、せっかくゴールウェイまで来たのなら、フェリーに乗ってアラン諸島まで足を伸ばすのもよろしいかと思います。アラン諸島に行けば、正真正銘、メイド・イン・アランのアランセーターが購入できるのです。
アラン諸島はイニシュモア島、イニシュマン島、イニシィア島の三島から成り、上写真はその一つ、イニシュモア島の風景です。
アラン・セーターのお店 アラン・セーターのお店
アラン・セーターのお店 アラン・セーターのお店
上写真はアラン諸島のイニシュモア島にあるセーター・ショップです。店内の雰囲気から言えば、「土産物屋」と言うべきかもしれません。店舗はイニシュモア島の港近くか、ダン・エンガス(イニシュモア島最大の観光スポット)付近に集中して建っております。お店によっては、日本語での解説文もあったりして驚きます(笑)。実際、日本人観光客も結構見かけました。また、アラン・セーター・マーケット&ミュージアムのようにオンライン・ショップを手がけているお店もあります。
価格については、カーディガンだったり、タートルネックだったり、プルオーヴァーだったりで変わってくるのですが、手編みセーターで大体130〜200ユーロあたりでしょうか。ただし、アラン諸島で販売されているとは言っても、全てがメイド・イン・アランではないようで、アイルランドの別地域にて作っているケースは多々あるようです。また、イニシュモア島は観光地化が進んでいるせいで、機械編みのアジア製もあったりするので(うっはー)、要注意です!
メアリー・オフラハティさんのお店

イニシュモア島におけるアランセーターと言えば、このメアリー・オフラハティさんの自宅兼店舗でしょう。ご自宅の一室に所狭しと並べられているアランセーターは、全てメアリーさんが編んだ作品。価格も、他店で販売されている手編みのアラン・セーターとあまり差はありません。以前は日本でも、このメアリーさんが編んだアランセーターが、わずかに輸入されていたようですね。
メアリーさんは日本でもたびたび紹介されておりまして、店内には、野沢弥市朗さん著の「アイルランド/アランセーターの伝説」に、伊藤ユキ子さん著の「紀行アラン島のセーター」が置いてありました。

お店の住所は、Oat Quarter, Inis Mor,Aran Islands。キルロナン村からダン・エンガスへ向かえば、右手に見えてきます。結構距離はありますのでご注意下さい。僕はレンタル自転車で行きました。もしお店の場所が分からなくなった場合は、誰かに聞けば、メアリーさんは地元の有名人ですので、すぐに教えてくれると思います。
イニシュマン島

こちらはイニシュマン島。ローマ法王にもセーターを献上した名人、モーリン・ニ・ドゥンネル(モーリン・オドゥンネル)さんが在住する島でもあります。この島では小学校のそばにある郵便局にて、アランセーターが販売されております。何と言っても、価格が大変リーズナブル。手編みながら、なんと90ユーロ!です。郵便局員さんは、「この島の人が編んだ」と話しておられました。つまり、紛れもないメイド・イン・アランですね。ただし、素材については、ウールなのかアクリルなのか、チェックして来ませんでした……。

また、割愛しますが、もう一つのイニシィア島でも、もちろん手編みのアランセーターがリーズナブルに販売されております。
イニシュマン・ニッティング本社

素朴で小さなイニシュマン島にはちょっとマッチしない?近代設備を揃えた高級ニット・ブランド、「イニシュマン・ニッティング」の工場です。日本でも伊勢丹や玉美、バーニーズをはじめ、いくつかのセレクトショップにて販売されておりますね。
このブランドでもアランセーターを作っておりますが、むしろ柔らかで軽く、発色も鮮やかな、"現代的な"ニットに力を入れている様子です。素材もウールに限らず、アルパカやカシミヤを積極的に取り入れております。
イニシュマン・ニッティングファクトリー・ショップ

「イニシュマン・ニッティング」の工場ではショウ・ルーム兼ショップも併設されておりまして、当然、日本価格より安く買えます。しかも嬉しいことに、一部の型落ちの商品はさらに4〜7割引となっておりました。お店の場所は説明しづらく、港から歩いて10〜15分ほどでしょうか。小さい島ですので、島の住民の方に聞けばすぐに分かると思います。住民も観光客も少ないため、お客さんは僕一人しかおりませんでした。
この会社の創業者であるターラック・デ・ブラカムさんは、アラン諸島のインフラ整備にも尽力した、イニシュマン島の大功労者だそうですね。
アラン諸島製のアランセーター
Aran sweater made of Aran Islands
日本でも正真正銘のメイド・イン・アランのアラン・セーターは購入できます。セヴィルロウ倶楽部さんで販売されている、ゴルウェイ・ベイ・プロダクツがそれです。当然手編みでして、柄も一着一着異なります。こちらのセーターは昔ながらの毛糸を使用しているため脂分を含み、多少の防水性があります。まさに海の男たちのためのセーターと言えるでしょう。アイルランド製のアランセーターの中でも、毛糸からこだわっているのは貴重な存在です。

僕は過去に、このブランドのアランセーターを二着購入しました。その際、編んだ方のサインも頂けるのですが、僕はアラン諸島へ、そのサインも持って行きました。編み手の方が本当にアラン諸島在住か、確認してみたかったのです(別に疑っていたわけではないのですか)。結果、お二人とも、イニシィア島在住のおばあさんという事が分かりました。間違いなく、アラン諸島製のアランセーターですね。

もっとも、現在は編み手の方の高齢化が進み、アラン諸島製のアランセーターは絶滅の危機となっているそうです。僕は約一週間、アラン諸島におりましたが、その間にアランセーターを着用している島の方は、一人も見かけませんでした。7月だったという事もあるかもしれませんが、アラン諸島の7月はまだまだ肌寒く、羽織る物は必要なのですが……。
ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ、生成りカーディガン

アランセーターと言えば、日本ではこのタイプが最初に連想されるでしょうか。生成り色の襟付きカーディガンです。ブランドは上記のゴルウェイ・ベイ・プロダクツ。かのラルフ・ローレン氏が同モデルを着用されていた事でも知られておりますね(ブランドはインヴァーアランか?)。
こちらのアランセーター、ボタンの間隔が不揃いなのがお分かり頂けると思います。これだと一般的には、「規格どおりじゃない」と見なされますが、この曖昧さが、アラン・セーター本来の姿とも言えます。何しろ島の女性が家族のために編む品。文化と言う観点では、正確性、均一性とは無縁なのです。
また、実際のアラン諸島在住者は、生成り色のアランセーターはほとんど着ないらしいですね。なぜなら、アラン諸島の方々にとって、アランセーターは作業着。汚れの目立つ色など着ないとの事。納得です。
ただし、15歳の男子たちが堅信礼という儀式に出る時には、生成り色のアランセーターを着る習慣あるそうですね。

こちらの着こなしとしては、BDシャツにチノパンorジーンズと合わせるのが王道でしょうか。インナーにはバスクシャツ、ボトムズは細身のカーゴパンツも有だと思います。雰囲気としては、お坊ちゃん風に、上品に、ですね。靴はJ.M.ウェストンのライトブラウン、クラークスのデザート・ブーツがよく合います。オールデンもなかかないけます。僕は所有しておりませんが、ワラビーやナタリーも良さそうですね。



ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ、焦茶カーディガン

僕が所有する、もう一着のゴルウェイ・ベイ・プロダクツ製アランセーターです。画像ではグレーがかって見えますが、実際は焦げ茶色です。上品な生成り色とは違い、こちらは野暮ったく、田舎っぽい雰囲気で着ております。インナーには濃い色合いのチェックシャツ、ボトムズは濃い目のブルー・ジーンズがほとんどですね。ジーンズのインディゴ色が、この焦げ茶色と非常によくマッチします。靴はオールデンがバッチリきます。クラークスのデザート・ブーツも。あとはシュニーダー・ブーツのジョッパー・ブーツも良いですね。

ちなみに、過去にアラン諸島において、もっともポピュラーに着用されていたのは紺色だそうです。僕もいずれ、紺色のアランセーター、欲しいですね(笑)。
ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ、生成りカーディガンの後姿 ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ、生成りカーディガンの後姿
ゴルウェイ・ベイ・プロダクツのタグ

ご覧のとおり、タグが真ん中ではなく、右寄りに付けられてしまっております(笑)。不正確なのは許せないと言う人もいれば、細かい事は気にしないで作るのが、文化の背景とも言えます。
僕としては、着用したら見えませんし、実用への影響は全くありませんので、気にしておりません。
ゴルウェイ・ベイ・プロダクツに編みこまれた枯れ草

庭で編んだのでしょうか、編み目に枯れ草が絡んでおります(笑)。不純物の混じった不良品とも言えますが、家庭内で作られるのだから、こういう事も起きてしまう、とも言えます。
僕としては、いかにも"本物の"アランセーターっぽくて、嬉しかったりします(笑)。
★参考文献★
「海の男たちのセーター 〜英国伝統ニットの旅」とみたのりこさん著。
「紀行アラン島のセーター」伊藤ユキ子さん著。
「アイルランド/アランセーターの伝説」野沢弥市朗さん著。

アラン・セーターの歴史について、概要はセヴィルロウ倶楽部さんのサイトが分かりやすいですね。また、過去にyellow ratさんにはアラン・セーターについての知識を数多く頂きました。どうもありがとうございました。




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