クラシコ・イタリアの注文靴店 Masahito Furuhata Italian classic bespoke shoe maker at Tokyo Masahito Furuhata |
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「彼が今度、ガットに入る人だよ」 靴学校に通う友人から、そう紹介されたのは01年秋。その時はお互い慌しい場だったので、挨拶を交わす程度で終わってしまったが……。 「自分の友人で、以前はガット、今はメッシーナで働いている古幡さんと言う靴職人がいる。古幡さんは本当に上手いし、センスもある」 靴職人の友人から、そのようなお話を聞いたのが07年初頭。 かねてより、その噂は耳にしておりました、靴職人の古幡雅仁さんが、08年10月にイタリアより帰国。そして09年から、ついに独立して工房を構える事となりました。 古幡さんは00・01年の2年間、日本の靴学校で製靴技術を学び、02年よりローマへ。イタリア一のビスポーク・シュー・メイカーの誉れ高い、ガットに弟子入りしました(この当時の様子が、靴雑誌「LAST」2号に掲載されております)。そして04年からは、ミラノのビスポーク・シュー・メイカー、メッシーナにて修行と、イタリア屈指の名門で学んだ経歴を持ちます。 現在、ガットはシルヴァノ・ラッタンジの傘下にあり、そのガットを支えた名職人、ガエターノ・ヴァストラさんも退職。つまり、日本人で唯一、ヴァストラさんから技術を学び、日本人で唯一、メッシーナにて技術を学んだ靴職人さんが、この古幡雅仁さんです。 古幡さんはミラノ時代からは、メッシーナはもちろんの事、同じくミラノのビスポーク・シュー・メイカー、バリーニ、コモッリ、ファブリ(08年7月に閉店)の仕事も請け負い、フリーランスの靴職人としてもご活躍されていたそうです。つまり、イタリアの各店が認めた実力の持ち主です。 さらに04年からは、ミラノに拠点を置きつつも、自由が丘にあるセレクトショップ、ピッティ・コレクションを通じて、ご自身のビスポーク・シューズの注文もとっておられました。 僕はその古幡さんに、靴作りの様子を見せて頂いたのですが、徹底してイタリア流にこだわった製靴方法に驚かされました……。 |
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古幡さんの作業場です。ご覧のとおり、一台の製甲(アッパー縫製)用ミシンが目立つだけの、簡素な空間です。フルハンドメイドのビスポーク・シュー・メイカーでも、漉き機やグラインダーなど、一部工程に機械を使うのは珍しくありませんが、古幡さんは極力、手で行うイタリア流です。 |
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ガットのラストに古幡さんが修正を加えた、古幡さんのベースラスト。 |
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そして、古幡さん作のビスポーク・シューズです。アッパーは日本には入ってない、フランスのタンナーによるカーフを使用。これは古幡さん独自のルートで、欧州の卸業者から仕入れているそうです。イタリアにて活動していた、古幡さんならではですね。スエード素材を用いる場合は、お馴染み、イギリスのタンナーであるチャールズ・F・ステッド。 |
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幅のあるスクエアトウ。ガットやメッシーナ等で伝わる、クラシコ・イタリアのビスポーク・シュー・メイカーを象徴するラインです。古幡さんも、このトウラインがハウススタイルだそうですが、お客様からの要望があれば、ラウンド系のトウも作成するとの事。 ちなみに、古幡さんのキャップトウは、他国とは作りが異なります。普通、キャップトウはヴァンプとトウのパーツを縫い合わせて、アッパーを作成しますが、なんと古幡さんの場合、まずはプレーントウを作り、その上にキャップ革を被せて作成するそうです。つまり、キャップの部分だけ、甲革が二重になるわけです。もちろん、二重になった部分は、他の箇所と段差ができないよう、その裏側を漉いて、フラットに仕上げます。この二重キャップは釣り込みにも技術を要するため、この方法が未経験の職人さんだと、そうは成形できないとの事。 なぜこのような作成方法なのか?古幡さんによると、理由は二つあるそうです。 まず一つ。ビスポーク・シューズの場合、フィッティングの都合上、ラストは左右、全く同じではありません。しかし、美しく見せるために、ヴァンプからつま先にかけては、左右同じように見せなくてはいけません。 そのため、後付けするキャップ革の長さや形状を調整する事により、左右が同じに見える、トウを完成させるわけです。 そして、この"パーツの後付け"は、ローファーも同様だそうです。つまり、ローファーの場合は、サドルもUモカ縫いもない、プレーンな状態でまずは作成し、その後、左右が同じに見えるよう、調整したサドルを取り付け、調整したUモカ縫いを行うそうです……フィッティングと外観を両立させるため、その手間たるや恐るべしです。 さらに理由の二つ目。その昔、イタリアでは人件費よりも革代の方が高く、革は貴重品だったそうです。そのため、キャップ部分はあらかじめ二重にしておき、履きこんで、トウが痛んできたら、その被さっているキャップ革を取り外し、また新しいキャップ革を縫い付けたそうです。 旧き良き時代の知恵と技術を残す、ガットとメッシーナ、伝統の製法です。 |
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ガットやメッシーナでは、このシームレスヒールが標準仕様だそうです。パターン作成の都合上、シームが必要な場合も、中央から意図的にサイドへずらして作成するとの事。イタリアならではの美意識ですね。古幡さんはイタリア時代、「ヒールはシームレスしか作った事がない」そうで、古幡さんのビスポーク・シューズも、特に要望がない限りは、シームレスヒールで作るそうです。 |
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古幡さんの靴で用いられるフィラー素材(インソールとアウトソールの間に入る素材)です。お馴染みのコルク板と、防水用の薄い樹脂シートを重ね合わせた二重構造。これも、ガット、メッシーナ流です。他のビスポーク・シュー・メイカーでは、コルク板、練りコルク、防水シート、レザー、ウールフェルトなどがございますね。 ちなみにシャンクは、西欧のビスポーク・シュー・メイカーでは一般的な、レザーシャンクだそうです。 |
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作成途中のアッパー裏、拡大画像です。黄線に沿ったステッチがご確認頂けますでしょうか?この部分、なんと手縫いです!マシンによる縫製ですと、アッパーの継ぎ目に段差が生じますが、手縫いによってその段差をなくし、足当たりを柔らかくする狙いだそうです。内羽根の靴にのみ、この仕様を用いるのだとか。 また、特に要望がなければ、ライニング素材はキッドを用いるそうです。キッドだと柔らかいため、手縫いがしやすいとの事。足当たりへの配慮もあると思われます。何でも、イタリアのビスポーク・シュー・メイカーだと、ライニング素材は牛革よりもキッドの方が一般的だそうで、他国との考え方の違いが伺えますね。 |
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フルハンドメイドのビスポーク・シューズでも、ウェルト、月型芯、先芯、トップリフトなどは出来合いのパーツを加工して使い、コストダウンを図っているケースもございますが、古幡さんは当然、自作しております。左上は、その古幡さん作成のトップリフト。レザーソールの部材と、右上にあるヴィブラム社のヒールパーツを黄線に沿って切り出し、繋ぎ合わせて作ったものです。 古幡さんはガットに入門した当初、日本の靴学校で教わった方法で仕事をしていたら、「それは量産靴の方法だ。ビスポークじゃない」と言われ、「一つの工程ごとに怒られた」そうです(笑)。ハンドでできる仕事はハンドで行う、それがイタリア流。イタリア製のビスポーク・スーツ、ビスポーク・シャツとも通じる概念ですね。 |
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続いて、古幡さんがイタリア時代、勉強用に購入したと言う、ヴィンテージ・シューズをご紹介させて頂きます。こちらはバリーニ。 |
このバリーニは、ご覧のとおり、なんとブラインド・ウェルト!ベヴェルド・ウェストを全周に施して、華奢に見せる仕上げですね。ウェルト製法ながら、見た目はマッケイ製法のようです。この製法も、古幡さんは注文があれば受けるそうです。 |
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こちらはミラノにあったビスポーク・シュー・メイカーであり、メッシーナ本人も勤務歴があったと言う、ダガタ。そのダガタ氏は、なんと初代ガットである、アンジェロ・ガット氏の甥に当たる職人さんです。 |
ミラノにあったビスポーク・シュー・メイカー、ヴェルガのボタン・アップ・ブーツ。インソールに入っている電話番号表示は、なんと5桁と、おそらく50年ほど前の品と推測される貴重品です。 |
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アルカンドのローファー。 |
ローマのビスポーク・シュー・メイカー、ランピン。 |
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最後に、古幡さんのビスポーク・シューズの概要をお伝え致します。 料金:一足目・25万円〜 二足目以降・22万円〜 いずれもシュー・トゥリー込価格。あくまでも参考料金です。使用素材、製法などによって、料金は変動致します。なお、ベヴェルド・ウェスト、ハーフ・ミッド・ソール等の仕様では、追加料金は発生致しません。 仮縫い:一回。仮縫い用のダミー・シューズを作り、仮縫い終了後、そのダミー・シューズは破棄して、本番の靴製作を行います。 住所:東京都港区赤坂7-5-34 インペリアル赤坂フォーラム225号 電話番号:03-6277-8084 古幡さんお一人で作業をしているので、要アポイントメントです。 最寄り駅は青山一丁目駅か乃木坂駅で、徒歩8分ほど。工房が入っているビルは、右上画像の案内看板が目印です。また、現在はメンズのみの展開ですが、今後はレディースも考えているそうです。 大きな地図で見る |
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