FOSTER & SON Punched Cap Toe Oxford Fitting
さて、ビスポークの醍醐味であります、肝心のフィッティングです。このフォスター&サンは美しいスタイルにも満足でしたが、それ以上に極上のフィット感に驚きました。あまりにも素晴らしすぎて、僕がこれまで履いてきた高級既製靴のフィット感なぞ、頭から余裕でふっ飛びました。履いた感触はとにかく柔らかい……アッパーもソールも、非常にしなやかに曲がります。
正直、一足目なだけに、フィッティングもスタイリングもあまり大きい期待はしていなかったのですが(笑)、想像以上の出来栄えに感動です。

それでは以下から、画像とともにフィットの様子を見ていきたいと思います。なお、フォスター&サンはタイトにフィットしてるので、薄手のソックスを着用しております。
山下大輔の右足 フォスター&サンの右足履いた状態

僕(山下大輔)の右足と、フォスター&サンを履いた状態での右足画像です。着用して、特にきつく感じる箇所はございません。ただ、これを書いている08年12月現在、僕はフォスター&サンにて二足目を注文中なのですが、ボールジョイント部をはじめ、まだ甲の部分に取れる箇所があるそうです。つまり、その箇所は緩いと言う事になりますね。自分では不具合を感じていないだけに、この状態からさらにフィット感が高まるとは、驚きの一言でした。
フォスター&サンの当たる箇所 フォスター&サンの当たる箇所

こちらは僕の左足画像です。フィット感は抜群ではあるものの、やはり完璧と言うわけではなく、黄線で囲っている、左足小指の関節部分が当たります。履き始めは良いのですが、8時間ぐらい経つと、結構痛くなるんですよね。この箇所は仮縫い時点でもきつく、完成時には大分修正されていたのですが、あともう一歩と言ったところでしょうか。
僕の場合、ここは既製靴でもよく当たる箇所でして、大丈夫なのはオールデンのバリーラストぐらいです。
山下大輔の右足側面

F&Sの右足側面

ミルスペックの右足側面

上から、僕の右足側面、フォスター&サンの右足側面、そして比較対象として掲載してみました、僕の所有既製靴の中で、もっとも踵のフィット感が良い、オールデンのミルスペック(モデルナンバー4900、ミリタリーラスト)右足側面画像です。こちらは踵については、同じオールデンのモディファフイド・ラストやバリーラスト、またはエドワード・グリーンの202ラストよりも上です。

そして、それぞれの画像を比較してみますと、ミルスペックの踵の曲線はフォスター&サンよりも強いくらいですね。しかし、実際のフィット感はF&Sの方が良いのです。僕の踵は下部だけが膨らんでいる形状で、さほど大きく湾曲していないので、そのせいでしょうか。また、踵のフィットには、ウエストガースのフィット感も大きく影響してくるそうなので、そのせいとも考えられます。
山下大輔の左足側面

F&Sの左足側面

ミルスペックの左足側面

そしてこちらは、左足側面画像です。やはり踵のカーブはミルスペックの方が強いほどですね。他の箇所も見て行きましょう。
山下大輔の右足踵

僕の右足。
F&Sの右足踵

フォスター&サンの右足。

ミルスペックの右足踵

オールデンのミルスペックの右足。
さて、今度は右足踵の真後ろからの画像です。青矢印で、踵の左右の角度を示してみました。

フォスター&サンの方が踵が小さく、そして実際の足に近い角度を描いているのがお分かり頂けると思います。オールデンのミルスペックは、内側は良いものの、外側が余っておりますね。
山下大輔の左足踵

僕の左足。
F&Sの左足踵

フォスター&サンの左足。

ミルスペックの左足踵

オールデンのミルスペックの左足。
続いて左足踵の、真後ろからの視点です。やはりこちらも、フォスター&サンの方が踵が小さく、実際の足に近い角度を描いておりますね。オールデンのミルスペックは、やはり踵の外側が余っております。
ただ、フォスター&サンの履き口の外側が、若干余裕があるのが気にかかるでしょうか。
フォスター&サンの踵のライン

こちらはフォスター&サンの踵を上から見た画像です。踵のラインが「レ」字に近く(または逆「レ」字)、左右非対称型で、かつ非常に小さく絞り込まれているのがお分かり頂けますでしょうか。まさに足に合わせて作っているからこその、この形状でしょう。

フォスター&サンのシュー・トゥリーの踵のライン

こちらはフォスター&サンのシュー・トゥリーです。やはり靴と同様、踵が左右非対称のレ字となっておりますね。

エドワード・グリーンの踵のライン

こちらは旧工場製エドワード・グリーン、202ラストの踵画像です。フォスター&サンは「レ」字型ですが、こちらはU字に近い左右非対称型ですね。この違いが、踵のフィット感の違いと言えるのかもしれません。

エドワード・グリーンのシュー・トゥリーの踵のライン

こちらはエドワード・グリーンの202ラスト純正シュー・トゥリーの踵。やはり、踵はほぼU字型ですね。

オールデンのミルスペックの踵のライン

そして、オールデンのミルスペックの踵画像です。フォスター&サンには及ばなくとも、202ラスト以上に左右非対称型で、かつ小さい踵となっております。そのせいでしょうか、僕の所有している既製靴では、このミルスペックが一番踵のフィットが良いんですよね。

踵のフィットについては、この上から見た形状以外にも様々な要素が関わってくると思いますが、それでも、このラインが一因しているのは確かな気がします。



フォスター&サンのシュー・トゥリー

ビスポーク・シューズの立体性については、シュー・トゥリーを観察してみると、よりハッキリする点があります。もちろん、シュー・トゥリーが靴の形状そのものを完璧に再現しているわけではないのですが(完璧だったら、きつすぎて着脱できない)、それでも、ある程度の参考にはなります。
フォスター&サンのシュー・トゥリー向かい合わせ

フォスター&サンのシュー・トゥリー正面

シュー・トゥリーを向かい合わせると、左右の違いが分かりやすいですね。右足の方がトウが高く、甲もわずかに高いです。土踏まずの形状も違います。

なお、上画像のシュー・トゥリーのハンドル部分が宙に浮いた状態になっておりますが、これは、トゥリーが靴に入っている状態と同じにするため、各パーツを両面テープで接着したためです(笑)。
フォスター&サンのシュー・トゥリー パーツ向かい合わせ

シュー・トゥリーの前パーツを、向かい合わせての画像です。やはり甲の形状もが左右で異なりますね。
フォスター&サンのシュー・トゥリー断面図

フォスター&サンのシュー・トゥリー、前パーツの断面です。土踏まずの角度も左右非対称にして、足に合わせようとしているのがよく分かります。これほど細かい箇所まで左右を違え、個々の足型に合うように工夫が凝らされおります。なので僕としては、よく雑誌やネットで見られる、「パターン・オーダー(または既製)ながらビスポーク級のフィット感」と言う記事は、なかなか信用できないのが正直なところです。


靴のフィッティングについては、踵以外にもいつくも重要な点がございまして、それらすべてをお伝えするのは困難です(特に素人で経験不足の僕では!)。しかし、このフォスター&サンの履き心地がどれだけ良いか、下の3画像を比較して頂ければ、それなりに説得力があるかと思います。

一日履いた後のアンディ

一日履いた後のチェルシー

一日履いた後のフォスター&サン

上から、ベルルッティのアンディ、エドワード・グリーンのチェルシー(202ラストの旧工場製。つまり、現在のジョン・ロブ・パリ工場製)、そしてフォスター&サンの、終日履いて、靴を脱いだ直後の画像になります。当然、脱いだ直後ですから、靴は反り返っております。

フォスター&サンが一番反り返っているのがご確認頂けると思います。

下2枚の画像にカーソルを当てますと、上の画像と切り替わりますので、比較しやすいかと思います。つまり、フォスター&サンは、このくらいソールの返りが良く、また柔らかな履き心地なのです。しかも、履き馴らしの必要がないほど、最初からよく返ります。

アンディはマッケイ製法のシングルソールと、一般的に、ウェルト製法よりもソールの返りが良いと言われている作りですが、フォスター&サンにはかないません。
ただ、アンディはローファーな分、踵も抜けやすいですから、レースアップ・シューズと比較するのは適当ではないかもしれませんね。

そして、2枚目のエドワード・グリーンです。グッドイヤー・ウェルテッド製法の高級既製靴では、オールデンとともに、ソールの柔らかさ、返りの良さに定評があるブランドです。さすがにウェルト製法ながら、アンディよりも反り返っているぐらいですが、やはりフォスター&サンには及びません。

本当なら、ソールの返りに優れる、シングルソールのオールデンとも比較したいところなのですが、オールデンはこれらの三足と違い、最初からトウスプリングが大きく取られていて、比較対象にふさわしくないのでやめました。ただ、オールデンのシングルソールより、フォスター&サンの方がよく返るのは言うまでもありません。

なぜ、これほどまでによく返るのか?これは、柔らかいソール素材もさる事ながら、靴そのものが高レヴェルでフィットしているのも、大きい要因ではないでしょうか。

既製靴の場合、どうしても足に合わない箇所があるため、靴を大きく返らせようとしても、どこかでズレが生じて、最後まで付いて来てくれません。
しかし、ビスポーク・シューズの場合、靴が足とピッタリと吸い付いているため、足の動きにも最後まで追従し、結果としてよく返るのです。もっとも、"追従"と言う言葉は、あまりふさわしくないかもしれません。靴と足が一体化して、同時に動いているような感覚なのです。
この新感覚は、本当に感動します。

「これがビスポーク・シューズだ。既製靴とはわけが違う」

これほどの反り返りを見せつけて、靴が無言でそう語りかけてきました。やはりフィットそのもののレヴェルが違います。







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