服地の芸術的魔力
The Artistic Fabric
ビスポーク・スーツは好きなれど、金銭的な事情であまり注文できない僕。しかし、生地だけは機会を見て購入し、「いつか仕立てる時のため」にストックしてあったりします。我ながら、貧乏くさいですね……。
あくまで生地ですから、僕が仕立てる事ができなくとも、後々の子孫・親族が使えると、少々強引に考えつつ購入しております。何しろ僕の場合、サイズが小さすぎるため、人に譲るのなら、仕立て済みのスーツよりも生地の方がよっぽど役に立つはずです。

それに何と言っても、良い生地は美しいですし、美術品同様、心を捉えて離さない魔力があります。

高級な生地が売れずに、「良かった。売れずに済んだ」と喜んでいたテイラーさんを、僕は知っています。そしてそのテイラーさんは、「何で売れ残って喜んでるの!」と、奥様に叱られていたそうです………。
上質な生地なだけに、そのテイラーさんはずっと手元に置いておきたいんですね。一素人の僕が言うのもおこがましいですが、そのお気持ち、非常によく分かります。僕も所有している生地たち、いつかスーツにしたい、ジャケットにしたいと思っておりますが、いざ仕立てるのに鋏が入れられるとなると、おそらく名残惜しくなるでしょう。

所有して、見て、触っているだけでも楽しい。これ、まさに美術品と同様の感覚です。

この「芸術的服地館」では、僕の所有している生地を、いくつかご紹介致します。言うまでもなく、生地は本来、服にして楽しむべき物で、仕立てないで述べた感想など、何の意味もないのでしょうけど、それでもあえて書いていこうと思います。いささか図々しくて恐縮でございます……。

なお、僕の所有している生地、ほとんどがヴィンテージ品です。古い品だけに、一応、虫食いや痛みなどがないか、僕なりに調べて買ったのですが、実際には、僕のような素人では分からない、痛みがある可能性は十分考えられます。一見、問題なさそうな生地でも、テイラーさんに持ち込んだら、状態悪くて仕立てられなかったと言うのは、割と聞く話です……。

と言いますか、僕が以前に持ち込んだ、キッドモヘアバラシャのヴィンテージ生地も、一部に損傷があって、テイラーさんがその痛んでいる部分を避けてカットしたり、目立たないところに持って来たりして、仕立てて下さったのですね。所有している生地たち、本当に形に出来るのか、いささか不安を覚えつつ所有しております……。

(※このテキストは、09年9月13日に別Blog「The Artistic Fabric」にて書いた記事を転載したものです)


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